清水簡易裁判所 昭和34年(ろ)50号 判決
被告人 日紫喜ゆり
明四四・六・一一生 無職
一、主 文
被告人を罰金二千円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二百円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部、被告人の負担とする。
一、罪となる事実
被告人は、医師でなく、かつ、あん摩師免許を受けないのに、別表記載のとおり、昭和三十二年九月中旬頃から昭和三十四年三月下旬頃までの間、前後五回にわたり、静岡県庵原郡蒲原町蒲原六百八十五番地の自宅において、山田博枝ほか四名に対し、全身の揉治療をなし、もつて、あん摩を業としたものである。
一、証拠の目標(略)
一、被告人の主張に対する判断
被告人は、(一)被告人の本件各所為は、いずれも、「つまつた血管を自然にやわらかくしていくもので、つまり、押えながらすじを伝わつてもんでいく」のであるから、あん摩ではない、また、(二)施療者各人から一回百円宛もらつているが、これらは、いずれも治療代として受け取つたものではなく、謝礼として受領したものであるから、被告人の各所為は、いわゆる「業として」なしたものではない旨主張するので、以下順次判断する。
第一、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(以下単に法と略称する。)の第一条にいう「あん摩」とは、慰安または医療補助の目的をもつて、身体を摩さつし、押し、もみ、またはたたく等の行為と解すべきところ、前掲各証拠によると被告人の本件各所為は、いずれも右あん摩に該当するものであること明らかであるから、この点に関する被告人の主張は採用できない。
第二、つぎに、法第一条によると、あん摩師を「業とする」ためには、免許を受けなければならないと規定されている。ところで「身体を摩さつし、押し、もむ」する等のいわゆるあん摩術が医行為に属し、これらの業務は、とにかく医業と密接な関係にあつて、人の生命、身体に及ぼす影響も大きい点があることに鑑み、国は保健衛生上の見地から、かかる業務に従事することを一般的に禁止し、特に免許を受けた者のみが、自由になしうることを規定したものと解せられる。してみると、同法第一条は営業により利益を得ること自体を禁止しようとする趣旨ではなく、「業として」とあるのは、反覆継続の意思をもつて、施術を行うことをもつて足り、現実に報酬を受け、または、これを目的とするか否かは、問わないものと解すべきである。
ところで、前掲各証拠を綜合すると、被告人は、反覆継続の意思をもつて、反覆継続して、あん摩行為をなしたことが充分認められるから、被告人が現実に受領した金銭の趣旨如何に拘らず、本件各所為はいずれも「業として」なしたものであると認めることができる。
よつて、この点に関する被告人の主張も、また、これを採用することができない。
一、適条
(判示各所為) あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法第一条、第十四条第一号
(併合罪加重) 刑法第四十五条前段、第四十八条第二項
(労役場留置) 刑法第十八条
(訴訟費用の負担) 刑事訴訟法第百八十一条第一項本文
(裁判官 井田友吉)
(別表略)